MWO (Migrant Workers Office)とは?
MWO(Migrant Workers Office:移住労働者事務所)は、フィリピン人労働者を管轄するフィリピン移住労働者省(DMW)の海外拠点です。
日本では、駐日フィリピン大使館内に設置されている「MWO-Tokyo」と「MWO-Osaka」が、日本企業によるフィリピン人材の雇用に関する各種申請の受付・審査・認証を担う公式窓口となります。
MWOの役割とDMWとの関係
MWOの母体であるDMWは、2022年施行の共和国法第11641号により設立されたフィリピン政府の機関です。従来のPOEA(海外雇用庁)やOWWA(海外労働者福祉庁)の機能を統合し、海外で働くフィリピン人労働者(OFW)の保護と支援を専門に行っています。(共和国法第11641号)
MWO-Tokyoは、このDMWの日本事務所として、以下の重要な役割を担っています。
- 申請窓口: 日本企業からの雇用関連書類の受付、審査、認証
- 労働環境の監視: 宿舎の監査や相談窓口の運営を通じた労働環境のチェック
- 労働者保護: DMW本国と連携し、出発前のオリエンテーションや緊急時のアシスタンスなどを提供
福祉制度(OWWA)との関連
DMWの下部組織であるOWWA(海外労働者福祉庁)が管理するメンバーシップ制度への加入が、全てのOFWに義務付けられています(年額25米ドル)。
この加入手続きもMWOへの申請プロセスに含まれており、完了しないと海外雇用許可証(OEC)が発行されず、ビザ申請の遅延に繋がります。MWOの規定に沿って適切に申請を進めることが、スムーズな人材導入の鍵となります。
MWO(DMW)ガイドライン準拠のメリット・デメリット
MWOへの申請を通じてフィリピン移住労働者省(DMW)のガイドラインに準拠することには、多くのメリットがある一方、準備すべき点もあります。ここでは、その両面を分かりやすく解説します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主なメリット |
✅ 法的リスクの低減とコンプライアンス強化 DMWの標準雇用契約を用いることで、フィリピンの労働法規違反リスクを大幅に軽減。労働トラブルや行政指導を防ぎ、企業の信頼性を証明できます。 ✅ 企業イメージとブランド価値の向上 ✅ 人材の質と定着率の向上 |
| デメリットと対策 |
課題①:追加的な費用負担 福利厚生(住居提供、渡航費など)や申請手数料が発生します。 【対策】国や自治体の助成金(特定技能外国人受入れ費用補助金など)の活用を検討。長期的な定着率向上による投資対効果を試算することが重要です。 課題②:手続きの複雑さと管理工数 課題③:文化・コミュニケーションの課題 |
フィリピン人材受け入れに必要なMWO申請書類の詳細
フィリピン人材の受け入れには、移住労働者事務所(MWO)へ正確な申請を行うことが不可欠です。以下に必須書類のリストと、作成・提出時の重要なポイントをまとめました。
必須書類完全リスト
-
企業証明関連書類 (日本語原本と英語訳の添付必須)
- 会社登記簿謄本(発行後3ヶ月以内)
- 営業許可証
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財政状態証明書類
- 直近の決算書(貸借対照表、損益計算書)
- 納税証明書
- ポイント: 全て英語への翻訳が必要です。
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詳細事業計画書(雇用プラン)
- 受け入れ人数、職種、具体的な担当業務を詳細に記載
- 募集・選考プロセス、採用予定時期を明記
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雇用関連書類
- 雇用契約書(英語及び日本語): DMWの標準雇用契約書に準拠することが必須です。
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MWO指定申請書類
- MWO-Tokyo指定の申請書(Job Order/Recruitment Agreement等)
- 取得方法: MWO-Tokyoのウェブサイトや認定送り出し機関を通じて最新様式を入手します。
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受入企業担当者の宣誓供述書
- 労働者保護に関する誓約を記載した宣誓供述書(Affidavit of Undertaking)
- ポイント: 日本の公証役場での認証が必要です。
書類作成・提出のコツとよくあるミス回避策
- 規定書式の厳守: 雇用契約書はDMWの最新版に準拠してください。独自の条項追加は認められないことが多いです。
- 原本の有効期限: 公的文書は発行後3ヶ月以内の原本を求められます。
- 職務内容の具体化: 「倉庫業務」ではなく「自動車部品の仕分け・在庫管理システムへの入力」のように、誰が読んでも分かるレベルで具体的に記述します。
- スケジュール管理: 書類の準備、翻訳、公証には時間がかかります。総作業日数60日以上を見込んだ計画を立てましょう。
- 説明責任の明確化: 申請手続きを外部機関に委託しても、最終的な責任は受け入れ企業にあります。MWOによる面接で経営者自らが事業計画を説明できるよう準備が必要です。
フィリピン人材受け入れプロセス:MWO申請と日本の制度対応
フィリピン人労働者の受け入れは、移住労働者事務所(MWO)への申請が必要で、手続きは以下の流れで進みます。
【ステップ1】MWO(移住労働者事務所)申請プロセス詳細
- MWOへの書類提出と契約認証
本記事で解説した必要書類一式を、DMW認定のフィリピン送り出し機関を通じてMWO東京、またはMWO大阪へ提出します。書類に不備がなければ、雇用契約書等が認証されます。 - 受理〜承認後の流れ
MWO東京またはMWO大阪での審査・認証には通常、数週間を要します。認証後、その書類をフィリピンのDMW認定のフィリピン送り出し機関を通じてDMWに提出します。DMWの認証後、その書類をもとに日本の出入国在留管理局へ在留資格認定証明書(COE)を申請します。COE交付後、DMW本国でOECが発行され、労働者は日本への渡航ビザを申請します。
【ステップ2】申請資格 厳選チェックリスト
| 企業側の要件 | 労働者側の要件 |
|---|---|
| ✅ 過去5年以内の労働関連法令違反なし | ✅ フィリピンでの関連職歴(職種による) |
| ✅ 適切な住居の確保と生活支援体制 | ✅ 日本語能力(特定技能ではN4レベル相当以上) |
| ✅ 財務の健全性(決算書等で証明) | ✅ TESDA等のフィリピン政府認定機関による訓練修了証明(職種による) |
【ステップ3】在留期限更新の重要ルール(日本側)
在留資格の更新は、期限の3ヶ月前から可能です。期限超過は不法就労となるため、厳格な管理が求められます。
- 早期アラート設定:カレンダーに「期限6ヶ月前」「3ヶ月前」のリマインダーを設定し、準備を開始します。
- 更新書類の確認:更新時には、最新の納税証明書や社会保険の納付証明など、改めて取得が必要な書類があります。
- 複数人管理の徹底:対象者が複数いる場合は、個別の管理表を作成し、OTIT(技能実習)等のポータルサイトも活用して抜け漏れを防ぎましょう。
MWO申請の費用・所要時間と効率化手法
フィリピン人材受け入れにおける「MWO申請」には、どれくらいの費用と時間がかかるのでしょうか。具体的な目安と、それを最適化する手法を解説します。
1. 申請費用の内訳
- 日本側のMWOでは申請費用はかかりません。フィリピン側でのDMW関連費用(1件あたり数千円程度)や、フィリピン本国で支払う海外雇用許可証(OEC)発行手数料(1人あたり1,000~2,000ペソ程度)、OWWAのメンバーシップ登録費用(1人あたり25米ドル)などが発生します。
- その他費用: 書類翻訳・公証費用や、現地の認定送り出し機関に支払うサービス手数料、日本語学校に支払う教育費用などがかかります。
2. 標準的な所要時間と遅延要因
- 標準処理期間: MWOでの企業登録・契約認証に約2~4週間、DMWでの認証に1ヶ月、その後日本のCOE申請・交付を経て、最終的なOECが発行されるまで、全体で3~6ヶ月程度を見るのが一般的です。
- (補足)最近ではMWO登録がDMWポータルに自動連携されるようになり、手続き期間が従来より約1ヶ月短縮される傾向にあります。
- 遅延が発生しやすい主なケース:
- 提出書類の不備(最も多い理由)
- MWOの繁忙期
- 追加情報の照会への対応遅れ
3. 時間とコストを最適化する実践的手法
DMWオンラインポータルをフル活用
DMW Online Services Portalは、手続きの進捗確認や情報登録に不可欠です。このシステムを使いこなし、労働者本人にも正確な情報を入力させることで、ミスを未然に防ぎます。
専門家(行政書士・登録支援機関)の戦略的活用
手続きに不安がある場合、フィリピン人材の受け入れ実績が豊富な専門家を頼るのが最も確実な方法です。彼らは最新の規則やMWOの要求事項を熟知しており、遅延リスクを大幅に低減します。結果として、人件費や機会損失を含めたトータルコストの削減に繋がります。
MWO申請トラブルシューティングFAQ
日本企業がMWO申請で直面しがちな課題と、その解決策をQ&A形式でまとめました。万が一のトラブルにも備え、確実な人材獲得を目指しましょう。
Q: MWOへの申請が却下(差し戻し)される最も多い理由は?
A: 「提出書類の不備・不整合」と「雇用条件がDMWの基準を満たしていない」の2点が大半です。
- 書類対策: MWO(DMW)への企業登録が未完了、提出した雇用契約書が最新の標準書式ではない、といったケースが散見されます。再申請時は、MWOからの指摘事項をすべて修正し、速やかに提出することが鉄則です。
- 雇用条件対策: 給与が日本の同職種の労働者と比較して不当に低くないか、適切な住居が提供されるか、といった点が厳しく審査されます。DMWの定める最低基準を必ずクリアしてください。
Q: 「在留資格認定証明書(COE)は交付されたのに、フィリピンから出国できない」と言われた。なぜ?
A: 海外雇用許可証(OEC)がDMWから発行されていない可能性が高いです。
COEは日本への入国を許可するものですが、OECはフィリピンからの出国を許可するものです。MWOでの認証後、COEの写しなどをDMW本国に提出してOECの発行手続きを進める必要があります。認定送り出し機関と連携し、進捗を確認してください。
Q: 急な欠員補充が必要。MWO申請以外の方法は?
A: MWO申請は必須ですが、採用対象を広げることで迅速な補充が可能になります。
- 専門の人材紹介会社の活用: フィリピンに拠点を持ち、DMW認定ライセンスを持つ信頼できるエージェントは、独自の人材データベースから迅速に候補者を紹介できます。彼らはMWO申請手続きにも精通しているため、プロセス全体の短縮が期待できます。

